トラウマイスタ
- 作者:中山 敦支
- 発売日: 2008/11/18
- メディア: コミック
作者 | 中山敦支 |
巻数 | 全5巻 |
レーベル | 少年サンデーコミックス |
出版社 | 小学館 |
掲載時期 | 2008年 - 2009年 |
ジャンル | 異能力バトル |
お気に入り度 | ★★★★☆☆ |
おすすめ度 | ★★★☆☆☆ |
備考 | 軽度な暴力描写あり やや鬱描写あり |
「トラウマイスタ」レビュー
あらすじ
子供のころの経験から鬼に過剰なトラウマ持つ此何ソウマ(ひかそうま)。その前に現れた謎の美少女・スジャータ。彼女はソウマのトラウマを反魂香で実体化させる。彼女の力を借りてトラウマを克服したソウマは、実体化したトラウマを自らものとして操るトラウマイスタとなる。彼らは反魂香と具現化したトラウマを使って世界征服を企む秘密結社・チャンドラカンパニーに立ち向かう。
レビュー
5巻で完結する少年漫画。同作者の『ねじまきカギュー』は結構有名ですが、その前の作品であるトラウマイスタはそこまでの知名度はないかもしれません。この作者の大きな魅力の一つである、ポップでサイコで迫力ある絵がこの作品でも発揮されています。しかし、この作品の一番の魅力は、他の漫画には中々ない怒涛の展開でしょう。
ジョジョのスタンドのようなものでバトルする異能力系バトル漫画です。異能力系バトル漫画は数多くあるものの、この漫画特有の面白い設定は、自分のトラウマを乗り越えることでアートマン(トラウマが実体化したスタンドのようなもの)を得るということです。主人公は、幼少期の鬼ごっこに関するひどいトラウマから「鬼」という単語を聞いただけでも汗が止まらなくなるほどだったのですが、それを乗り越えたことで自らの能力にしました。他にも「笑い」や「虫」や「刀」など、数々のトラウマを抱え、そして乗り越えたキャラクターが登場します。「能力を持つ人物」=「トラウマを抱えていて、それを乗り越えた人物」というのが他にない設定で、人物に厚みを持たせています。
魅力は絵やキャルクターもそうですが、この作品の一番の魅力はその展開でしょう。週間少年サンデーといえば、名探偵コナンが良い例ですが、人気作品で巻数の多いものがいくつもあります。一方で、同じサンデーのこの作品は全5巻。そう、この作品は(おそらく)打ち切り作品です。しかし、これによって衝撃的な展開の繰り返しとなり、他の少年漫画にはないスピード感とインパクトが味わえます。
5巻という少年漫画の中ではかなり短い部類の作品ですが、その中には友情も、熱戦も、成長も、何もかもが超高密度で詰まっています。特に終盤からの収束は圧巻で、数ある漫画の中でもトップクラスの衝撃的なシーンがあります。
ジャンプなどを読んでいると、打ち切りが近くなって展開が早くなり、面白くなる漫画ってありますよね。その最高峰レベルに位置するのがこの作品だと思います。それに、それだけ物語を加速させておいても消化不良にならずに作品全体として完成度が高いのも素晴らしいです。
『ねじまきカギュー』ほどではありませんが、時々サイコな描写があるので、苦手な人は苦手かもしれません。トラウマが主題の一つですからね。あと、キャラクターは結構強烈なのが多くて、ノリが合わない人もいるかもしれません。しかし、絵もキャラクターも、好きな人はとことん好きだと思います。
まとめ
5巻と短いながらも少年漫画に必要な全てが怒涛の展開でのり付けされ詰め込まれた作品。それでいて、物語としては調和が取れており完成度が高いです。キュートでポップで時々サイコな力強い絵も物語とマッチしています。打ち切り漫画特有の物語の収束が好きな人は勿論、熱い展開や主人公の成長が好きな人には是非とも読んでいただきたい作品です。