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ぼくらの

ぼくらの(1) (IKKI COMIX)

ぼくらの(1) (IKKI COMIX)

作者 鬼頭莫宏
巻数 全11巻
レーベル IKKI COMIX
出版社 小学館
掲載時期 2004年ー2009年
ジャンル ロボットアクション(?)
お気に入り度 ★★★★★★
おすすめ度 ★★★★☆☆
備考 軽度暴力描写あり
鬱描写あり

「ぼくらの」レビュー

あらすじ

夏休みに自然学校に参加した15人の少年少女は、ココペリと名乗る謎の男に出会う。そこでココペリに「巨大ロボットを操り巨大な敵を倒して地球を守る"ゲーム"」に誘われ、契約して参加することになる。コンピューターゲームかなんかだと思っていたが、目の前に現れたのは500メートルにも及ぶ黒い巨大なロボットと巨大な敵。明らかにただのゲームではない何かに巻き込まれた子供たちは、どうするのか。

レビュー(1、2巻のネタバレ含む)

2007年にアニメ化した鬼頭莫宏の代表作の1つです。漫画やアニメを知らなくても、アニメの主題歌『アンインストール』を聞いたことがある人は多いのではないのでしょうか。

ジャンルとしてはロボットアクションとなるのかもしれませんが、「ロボットアクション描写」:「人間の描写」=1:9ほどで、深い人間心理を描いた作品です。
(以下、1,2巻のネタバレがあります)


謎の男ココペリに言われるがままゲームに参加した15人の子供たちの前に黒い巨大なロボットと、それに対峙するように巨大な蜘蛛型の敵が現れます。そしてぬいぐるみのような(口の悪い)コエムシという生き物(?)が現れ、ロボットのコクピット内にワープさせられます。コクピットにはココペリの姿。ココペリはロボットを繰り、尖った腕やレーザーで敵を難なく撃破し、そのまま消えてしまいます。
巨大なロボットと地球を守るという使命に子供たちは興奮し、地球を守ろうと意気込みます。そして翌日、また巨大な敵が出現。ワクというリーダー格の元気なサッカー少年が「声」を聞き、ロボット(子供達は『ジ・アース(Zearth)』と命名)の操縦者となります。慣れない操縦に苦戦しながらも、敵を撃破したワク。ジ・アースの上に出たワクは勝利の雄たけびを上げますが、「恥ずかしいからやめろ」とウシロに背中を軽く叩かれ、そのまま力なく落ちて死んでしまいます。子供たちは狼狽。落とした張本人のウシロも故意ではないようで動揺します。その後、また新しい敵が現れ、今度は子供らしくない価値観を持つコダマが操縦することになります。街中での戦闘となり、コダマは被害を考えずに戦闘します。そんな中、尊敬する父親を踏み殺してしまい、コダマはひどく動揺します。それでも敵を倒しますが、そのまま倒れて死んでしまいます。
そこで、コエムシから衝撃の事実が告げられます。なんと、ジ・アースは操縦者の生命力で動いており、操縦した人は死んでしまうというのです。あまりの事実に呆然とする子供たち。しかし非情にも新しい操縦者が選ばれるのでした。

敵に負ければ全人類が死ぬ。勝っても自分は死ぬ。まだ中学生の子供たちにはあまりにも残酷な不条理。この設定だけでも陰鬱な雰囲気が漂いますが、それ以外にも大人たちの理不尽に巻き込まれたりそれぞれが悩みを抱えていたりと、(精神的に)残酷な描写が多く、『鬱漫画』と言われることが多いです。しかし、ただただ暗いだけの漫画ではありません。必ず死ぬというこれ以上なく理不尽で絶望的な現実に置かれた子供たちがその中に見出す希望や思いが、あくまで客観的でドライに描写されています。この作者の作品全般に言えることなのですが、何が正しいとか、間違っているとか押しつけがましい主張が一切ありません。ただそこにあるのは理不尽に向かう子供たちや、そんな子供たちを取り巻く大人たち、巨大なロボットと敵の戦闘に揺れる社会です。社会も何も知らない子供たちが、自分の命を賭して戦う先に何があるのか。是非とも読んでいただきたいです。

まとめ

鬱々とした設定と淡々とした描写から鬱漫画として名高い作品。しかし、その中には究極の絶望下における人間の強さや思い、そして希望が描かれていると私は思います。登場人物たちの言葉も心を打つものが多く、私の一番好きな漫画の1つです。